○教育環境適正化(学校統合)計画            秋田県能代市

 

能代市は合併前の旧能代市と旧二ツ井町でそれぞれ、学校統合が進められた。

前者は中心市街地の人口空洞化に伴い3校を2校に統合したものであり、後者は
過疎化に伴い、7校を段階を経て1校に統合したものである。

 

1.渟城(ていじょう=のしろ)3校統合

 

@経緯

・平成13年 市行政改革大綱に「学校の統廃合の具体的な検討」折り込む。

・14年から2年間をかけ「21世紀能代市学校教育環境適正化検討委員会」で検討。

・16年 「学校統合協議会・学区適正化推進協議会」を設置し検討。

・17年 19年4月に3校廃止、2校新設を決定。

・17年から2年間をかけ「渟城3校統合2校新設準備会」を設置し検討。

A「21世紀能代市学校教育環境適正化検討委員会」の概要

・検討項目は ☆適正な学区の設定 ☆学校の統廃合 ☆校舎の利用 ☆その他

・委員構成 校長会、PTA、自治会連合会、民生児童委員、退職校長会、学識経験者

・審議経過 全体会7、班長会5、視察3、アンケート2、意見を聴く会6回開催

 →全体会7回のうち3回は班編成で行った。

・提言要旨

 ☆市街地の渟城第一〜三小学校を2校とすることが望ましい。学区再編が望ましい。

 ☆市街地周辺の学校はそのまま見守る。

 ☆郊外の学校は近い将来の統廃合を視野に。

 ☆施設整備は積極的に取り組む。

B「学校統合協議会・学区適正化推進協議会」の概要

・諮問事項は ☆3校の2校への統合 ☆学区再編 ☆3校以外の学区 ☆境界地域の

 弾力的学区運営

・委員構成 校長、PTA、学識経験者

・審議経過 全体会6、答申起草委員会4、視察1、話し合い6回開催

・答申要旨

 ☆諮問のとおり統合が必要

 ☆いったん3校を全て廃止し、新たに2校を設置することが必要

 ☆地域のつながりや通学路を考慮した弾力的な学区運用

 ☆兄弟で異ならない弾力的な運用

C「渟城3校統合2校新設準備会」の概要

・検討事項は ☆3校統合に伴う交流事業 ☆新設2校の校名、校歌、校章、校訓

 ☆新設2校の教育基本方針 ☆通学路と危険箇所 ☆修学旅行、運動着、補助教材等

 の保護者負担が伴うこと ☆保護者や地域の要望把握 ☆その他

・委員構成 PTA、同窓会、自治会、学識経験者、校長

・審議経過 全体会7、その他

D説明いただいた事項

・保護者に対して行ったアンケート結果では、学区制については「このままでよい」が

 圧倒的だったが、統廃合について尋ねると「必要」「検討か必要」が多くを占めた。

・「学区に関するご意見を聴く会」を開催すれば、課題が次々と出された。これらを提言

 に盛り込むよう工夫した。

・親からは反発もある。一方で望ましい規模と環境を求めてもいる。

 

2.二ツ井地域小学校統合

 

@経緯

・平成10年 「教育環境懇談会」で再編議論開始。

・15年から2年半、「小学校再編計画基本構想委員会」を設置し検討。

・17年 第一次統合。7校を4校に。

・18年 能代市と二ツ井町が合併。能代市となる。

・19年 「二ツ井地域小学校統合準備会」を設置。

A「小学校再編計画基本構想委員会」の概要

・検討項目 ☆初等教育方針 ☆通学体制 ☆施設整備 ☆給食、学童保育体制

 ☆学校建設候補地

・委員構成 学校関係者、保育関係者、公民館関係者、学識経験者

・審議経過 委員会11、視察2回

・報告内容

 ☆初等教育方針

 ☆通学体制 バス通学は4方向7路線

 ☆施設整備

 ☆給食のあり方

 ☆学童保育 下校時までの保育とともに下校後の居場所作りへの対応

 ☆跡地利用 地域住民との検討を基本。子どもと地域の繋がりや地域づくりを考慮

B「二ツ井地域小学校統合準備会」の概要

・事務 ☆4小学校の統合に係る交流事業 ☆新小学校の校名、校歌、校章 ☆通学路、

 危険箇所 ☆修学旅行、運動着、補助教材等の保護者負担が伴うこと ☆保護者や地

 域の要望把握 ☆その他

・委員構成 基本構想委員会、PTA、区長、校長

・協議内容 全体会4、その他

C説明いただいた事項

・地区ごとに説明会を開催。

 1回目では統合へのスケジュール、通学方法、閉校式典について説明した。1回目の

 説明会で出された質問に2回目で回答した。2回目の説明会では廃校利用についても

 説明した。

・当初、平成20年を期して統合が目指されたが、統合はできたものの校舎は間に合わ

 なかった。22年に校舎完成の予定。それまでは現在の二ツ井小学校に全員が通学す

 る。

・保護者からの声は、通学に関するものが多かった。特にスクールバスに関する要望が

 多かった。

・部活動のスポーツ少年団への移行、親の関わり方、指導者への不安などもあった。

・地区ごとの説明会は基本的に2回。しかしスクールバスに関し、関係のある地区のみ

 さらに1回開催。

・スクールバスについて

 小学生は4km、中学生は6kmを基準とする。

 9台を教育委員会が保有。

 運転は職員1名、シルバー3名。

 帰りの便は3便体制。15時、16時、1830分。児童館や子ども教室で待つ。

 

3.感想

 

 応対いただいた職員の方の名刺は秋田杉の板製。胸には秋田杉の木目の美しいネーム

プレート。見せていただいた市議会議場はまるで映画のロケセットのような古風で格式

高い造りでした。空路、短い時間でここに到着しましたが、あらためて遠いところに来

たという感覚。しかし学校規模適正化の問題では、まさに丸亀市と同様の課題と取組が

ここでも展開されていました。

 丸亀市ではまだ議論の緒についたばかり。結論はおろか何も方向が定まったわけでは

ありませんが、少子化、過疎化、市内の人口移動の事実があり、関心を抱いての視察で

ありました。

 旧能代市街地の3校は中心地の空洞化によって、また旧二ツ井町の7校は過疎化によ

って、それぞれ早い時期から議論が始められていました。時間をかけ、ていねいな合意

形成のプロセスを辿ったことが、いただいた資料からよくわかります。

 その資料は膨大で克明な記録であり、とても整理されてわかりやすいものです。経費

面に詳しく触れませんでしたが、資料を参照してください。

 統廃合が単に経費合理化の側面から失速に進められることがあってはならないと思い

ます。適正な学校規模の確保と、学校が遠くなるというデメリットの間で、子どもたち

を中心に保護者、地域住民の意見が十分に取り上げられ、理解を得ながら進められてい

くことが何より大切と思います。その意味では、進め方に高いレベルが要求されるとも

言えると思います。

 かつて旧丸亀市で、二学期制導入に際して審議したことが想起されます。視察先が伊

達市と金沢市であったことから、「涼しい地域ばかりで参考にならない」などと批判が出

たこと、「初めに結論ありきではないのか」という疑心暗鬼。これを反省点として踏まえ

つつ、これからの議論に、この能代市のケースをぜひ参考にしていただきたいと思いま

す。

 

 

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